PROFILE
医師・博士(医学)
株式会社OPExPARK 顧問
KAZUHIRO HONGO
本郷 一博医師
1978年信州大学医学部卒。2003年信州大学医学部脳神経外科学教授、2014年信州大学理事・副学長、医学部附属病院長を歴任。2019年より信州大学名誉教授および伊那中央病院院長。2014年よりOPeLiNKの開発に携わり、2019年にはOPeLiNKによる遠隔支援手術を実施。当社の創業と共に、そのミッションに強く共感し顧問に就任。
株式会社OPExPARKとの出会いから現在まで
株式会社OPExPARKとの
出会いから現在まで
株式会社OPExPARKにおいて、
どのような活動をされているのでしょうか?
私は信州大学在籍時に、各種医療機器・設備を接続・連携させ、手術の進行や患者さんの状況を統合把握することにより、手術の精度と安全性を向上させる「スマート治療室」の開発を進めていました。その中心となったのが、治療室用インターフェース『OPeLiNK』です。
その後、『OPeLiNK』を開発した株式会社デンソーの精鋭たちが集まりベンチャー企業(後の株式会社OPExPARK)を立ち上げるとのことで、参画を打診いただきました。信州大学在籍時からお付き合いがあったこと、“手術の質と安全性の向上・手術教育へ貢献する”という自身の思いから、株式会社OPExPARKのミッションに強く共感し顧問に就任いたしました。
現在の外科手術教育における課題
現在の外科手術教育に
おける課題
信州大学名誉教授および伊那中央病院院長。
二つの異なるお立場から、本郷先生のお考えをお聞かせください。
課題は大きく二つあると思っています。一つ目は、手術機器・治療方法の進化による手術機会の減少。二つ目は、2024年4月から適用となる「医師の時間外労働上限規制」です。
課題1. 手術機器・治療方法の
進化による手術機会の減少について、詳しくお聞かせください。
脳神経外科を含めた様々な外科系の手術は、この数年~数十年の間に大きく進歩しました。脳神経外科で言えば、術中のモニターや新しい手術機器の開発などが進歩に大きく貢献していると思います。また、手術以外の治療である放射線治療・化学療法・血管内治療、さらには神経内視鏡を使った低侵襲治療も同様です。
従来の脳外科手術は、手術顕微鏡を使った開頭手術(マイクロサージェリー)が中心でしたが、神経内視鏡手術や血管内治療が増えてきています。治療方法が次々と開発され、患者さんにとっての低侵襲化も進んでおり、これはとても良いことです。一方で、開頭手術の機会が少なくなっており、脳外科医一人ひとりが経験する手術数が非常に少なくなってきています。
脳外科治療において、血管内治療ができない、内視鏡手術も適応でない場合には、開頭手術による治療が必要になります。すなわち、開頭術が行われる症例は治療難易度が高いものに限られてきている現状があり、術者は、少ない症例で高い治療成績を求められるということになります。これは術者教育という点において大きな課題だと考えています。
医師の時間外労働上限規制について、詳しくお聞かせください。
医師の働き方改革として、2024年4月から適用となる「医師の時間外労働上限規制」というものがあります。教育・手術に触れる時間が必然的に減っていく環境下で、手術の質・安全性を担保しつつ、どのように手術教育を行っていくのかを早急に考える必要があります。
若手医師は日ごろから自己研鑽を重ねていかなければなりません。また、研修・カンファレンス・学会等で発表する資料の作成・準備も担ってもらうことが多いです。ときには長時間の手術動画を編集するといった作業をすることもあるでしょう。これは、若手医師にとっては良い経験・勉強になることだと思っていますが、日々の業務に追われる若手医師にとっては大きな負担となっていることも事実です。
病院の管理職は、若手医師に限らず全ての医師の負担を軽減させる責務があります。一方で、手術の質・安全性を落とすわけにはいきません。この二つ(医師への負担の軽減・手術の質・安全性の担保)を両立できるように、効率的且つ効果的な手術教育方法を検討・導入することが急務であると考えています。
手術におけるラーニングカーブを急峻(きゅうしゅん)
させるといったことが必要である、ということでしょうか?
その通りです。そのために医師は良い手術を多く見ないとなりません。私は、手術巧者の手術を直接、少しでも見せてもらうことができれば、それはうまい術者になりたいと思っている若手とってかけがえのない素晴らしい経験になると考えています。そして、手術を見た後はその経験を持ち帰って患者さんの治療に還元する、自分の手術に活かすということが重要だと思います。
opeXpark(手術教育サービス)に期待すること
opeXpark(手術教育サー
ビス)に期待すること
本郷先生が感じられている外科手術教育における課題に対して、
opeXparkはどのように貢献できるとお考えでしょうか?
前述のように、外科手術教育においては手術症例数の減少や働き方改革などへの対応を求められている時代になっています。株式会社OPExPARKの取り組み・プロダクト、特にopeXpark(手術教育サービス)は、多くの医師や病院経営者が持つ大きな課題に取り組むことができる、優れたツールの一つだと考えています。
例えば、時間に関係なく手術を学びたいと思っている研修医は多くいると思います。夜中まで長時間の手術に入っていた場合、これは時間外労働の上限規制を超える可能性が高く、病院の管理者が処罰されてしまう事態を招きかねません。
医師と病院は、このような難しい状況に合わせた対応をとっていかないといけません。対応方法は様々あると思いますが、その一つとしてopeXpark(手術教育サービス)があると思います。
手術に携わる医師の方々に幅広く
opeXpark(手術教育サービス)を使ってもらいたい
手術に携わる医師の方々に
幅広くopeXpark(手術教
育サービス)を使ってもら
いたい
どのような方に使ってもらいたいと思われますか?
opeXpark(手術教育サービス)は、幅広い層の方がターゲットになると思います。国内の脳外科を例にお話しします。まずは研修医(レジデント)・専攻医。次は術者を任せられはじめる年代の医師。さらに所属施設でチーフとしてやっていて、自分の技術を伸ばすために新しい手術を学びたいという意欲のある方でしょうか。
特にチーフという立場にいる医師の場合、業務・時間による制約がとても多いと思います。そのような方に、opeXparkを介して、日本国内にいる世界のエキスパートの手術を見て学んで欲しいと思っています。そして、見て学んだことをチーフとしての立場から後進の研修医・専攻医たちへ教えていただき、さらには自分自身の技術にも磨きをかけていただきたい、というのが私の思いです。
どのような組織が使うことが良いと思われますか?
やはり中心は大学病院ではないでしょうか。脳外科では各大学を中心とした教育プログラムというものがあり、関連施設と連携してカンファレンスを行っています。ネットを用いてカンファレンスを行っている場合など、opeXparkを活用すると、組織として大きな意味を持つのではないかと思っています。
最近、海外医師の会員登録が増えてきているのですが、
これについてはどのように思われますか?
「opeXpark(手術教育サービス)を見ました」という医師たちが、インターネット上で意見を交わすことや、opeXparkで見た手技に関して「直接教えて欲しい」という相談などが、今後生まれてくる可能性はあると思いますね。オンラインで出来た繋がりが、オフライン・リアルの中でも広がると良いですよね。
株式会社OPExPARKへのメッセージ
株式会社OPExPARKへの
メッセージ
今後の株式会社OPExPARKに対して、
期待していることなどありましたらお聞かせください。
株式会社OPExPARKには様々な分野のエキスパートが在籍しています。各々がアンテナを高く張って、新しい技術・アイデアを取り入れ続けて欲しいと思っています。メディカル分野だけにとらわれる必要はありません。他の分野であっても自分たちの分野に活かせるものがないか仲間と一緒に考え、opeXpark(手術教育サービス)を含めたプロダクトの向上に全力を注いでもらえることを願っています。